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2008 年07 月11 日

生活保護の交通費制限撤回

 7月9日の日経朝刊に「通院する生活保護受給者への通院交通費支給基準を厳格化した厚生労働省の通知をめぐり、同省は、基準を6月に緩和した際に通知は事実上の撤回と明言した大臣の発言録を都道府県などに送り、支給を必要以上に制限しないよう求めることを決めた。北海道滝川市の生活保護不正受給事件を受け、厚労省は4月、通知で支給基準を厳しく制限したが、受給者らの批判を受けて6月、支給基準を緩和した。しかし、その後も追加通知や大臣の発言に従わず支給を制限したままの自治体があるとの苦情が続出していた。」と報道されていた。この件では、TVでも、6月頃、国の基準があいまいなため、自治体が困惑して支給を制限しているかのような報道がなされていたような気がする。

 地方自治の観点からすると、ここでの問題はいくつかある。
 第一に、生活保護費の支給は、生活保護法に基づく法廷受託事務とは言え、自治体の事務である。自治体には、国の処理基準に従うべき義務があるとは言え、自治体の事務である以上、自治体にはその地域の生活保護世帯の実態、公共交通機関の普及状況に照らして、国の処理基準を適切に解釈運用すべき義務がある。したがって、「国の基準があいまいだから」通院交通費を支給できないのではなく、「国の基準があいまいだから」こそ自治体がそれを適切に解釈運用して通院交通費を支給できるのである。議論が本末転倒である。ところが、新聞のスタンスは国批判に向いている。
 第二に、事実上の撤回とする大臣の発言録を自治体に通知する厚労省の姿勢である。まるで、大臣が言っているから仕方なくそうする、と言っているように聞こえる。正式に先の厚労省通知を廃止する旨の通知を出すべきである。そうでないと、大臣が替われば、またぞろ通院交通費支給制限通知が「復活」するのではないか。
 第三に、「大臣が支給制限を緩和したことに従わない自治体はけしからん」とする批判と、「それに対する苦情を国が受け止めたこと」への評価が見受けられることである。国の基準に従わないことに問題があるのではなく、自治体現場が自分の頭で考えずに基準の新設改廃に唯々諾々と従うことに問題があるのである。そして、その是正は自治体現場でなされるべきであるのに、国が是正することに期待していることに問題があるのである。
 国=「お上」意識を払拭することが地方分権である。分権を推進するためには「お上」意識を拭い去ることから始めなければならない。

投稿者:ゆかわat 00 :30| ビジネス | コメント(0 )

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